SSブログ

秋刀魚の味(DVD) [映画]

「小津さんの映画はそれなりの歳になってわかるのかもしれないわね。」
そんな言葉を友人が言っていたのを思い出した。
彼女は当時20代で観たけどよくわからなかったという。
そして「今観るといいなぁって思うのよ」と。

私は今小津さんの映画を見始めている。
すごくすごくいい映画なのだ。
良い歳になったということだな。

秋刀魚の味の内容は、娘をお嫁にやるまでのお父さんからみたお話。
笠智衆さん演じるお父さんが同僚と飲んでいるシーンを観ると
当時、こんな飲み方をしていたのかな?とか
風景や会話がすべて昭和的で、心が心地よく揺さぶられる映画というのか。。。

なんてことない日常のお話なんだけど、人間の感情、人への気遣いや逆にずるさが
小津さんの映画はそれがくどくなく自然によく表現できているんだと思う。
そしてだいたい小津さんの作品でちょっとむかつく登場人物がいるんだけど、
今回は、長男。
自分で稼いでゴルフクラブ買えよ!お父さんに頼らずに!といらっとしちゃった。笑


この頃の俳優さんの層の濃さがいいよね。
笠智衆さんの奥さんに先立たれ再婚もせず子供たちを育てる優しいお父さん役や、
東野英治郎さんの先生だったのに今やラーメン屋のマスターになって
教え子からいたわってもらうなんとも切ない役をされていて全く水戸黄門らしからぬ感じがまたいい、そしてそして岩下志麻さんが家族のことを思い自分を殺している娘役がかわいいのよね。


大抵小津さんの映画を観ていると私顔がニコニコしたりいらいらしたりするんだよね。
そして映画に向かって話してる。
「そうだよね、そう。」なんてね。
不思議なんだよね。
すごく自分が知ってる日常を物語にしているからなのかなぁ。

そしてお父さんが当時一緒の部隊に行った戦友と飲んでいるシーンで
「日本が負けてよかった」というんですよね。
そしてそのお店では軍艦マーチがかかっている。
そういう良い方ももあるんだなってちょっと思ったりして。

とにかく観終わるとだれかとこの気持ちをシェアしたくなる、温かくなる映画です。


そして、カメラもいいのです。
廊下を大事にしているのです。
飲み屋でも家の中でも、あの何も動きのない廊下を映す事でシーンを区切っているんだけど、
奥行きのあるまっすぐな廊下が気持ちを落ち着かせるというか、
奥の扉から自分の感情を逃がしてくれる効果があるように思う。

温故知新とはこのことかもなぁ。
暑い夜にしっとりと観るのはどうだろうか。


----------------
小津安二郎監督
日本 1962年

http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id140622/
nice!(17)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 17

コメント 5

ぶんじん

未だに観たことがないんですよね。うむ、やっぱりこれは観ないと。
by ぶんじん (2010-07-25 19:28) 

nyan

言葉の使い方とかも、すごく、好きなの~^^
by nyan (2010-07-26 00:47) 

hatsu

うん、そうだね。
暑い夜にしっとり観るのいいかも。
私もそろそろ、小津さんデビューしょう^^
by hatsu (2010-07-26 05:21) 

cjlewis

小津さんの映画、数本しか見たことないけど、
あの空気感は好きだな。
うまく言えないんだけど、
昭和時代って、みんなささやかな夢を持ってたよね。
そして、がんばればそれが叶うって希望を持てた。
そんな空気感が全体に漂ってるところがいいな。
by cjlewis (2010-07-27 02:06) 

カエル

ぶんじんさん
観て下さぁい。損させませぬ。

nyanさん
一言ずつが優しいんですよね。わかりますぅ。

hatsuちゃん
旦那様の是非観てみて欲しいな。
2人の感想聞かせて!

cjlewisさん
そうだ。空気感っていうのはいい言葉ですね。
今日ベドロ・コスタ監督は、小津さんの映画のことを
「ロックですよね。」と言ってたんです。
なんかピン!ときました。
確かに本気のロックな映画だなって思った。
by カエル (2010-07-27 23:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0